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私の一番古い本の記憶は、福音館書店から出ている「こどものとも」だ。通っていた幼稚園から、母が毎月一冊買ってくれていた。

絵本はいつも、幼い私の心を躍らせた。雀が旅に出る話や、狐と狸の化かし合い、ときには迷路がたくさん書かれている絵本もあった。

私は、今月はどんな絵本だろう、と絵本が届く日を楽しみにしていた。母は幼い私に、毎日寝る前に絵本を読んでくれた。それは、幼稚園で買ってくれた「こどものとも」だったり、当時住んでいた地域にある公民館から借りた本だったりした。

ひとつの布団に母と入り、母が聞かせてくれる絵本の世界に夢中になる。特に、新しい絵本が届いた日の夜は、布団に入るのが待ち遠しかった。今月の絵本はどんな話だろう、といつもより早く寝床に入った。

大好きだった母は、もういない。だが、一緒の布団に入ったときの母のぬくもりと、絵本を読んでくれた穏やかな声は、いまでも私の中にある。

(出典:『やまがた街角 第67号』2013年12月1日発行)

●『やまがた街角』とは
文化、歴史、風土、自然をはじめ、山形にまつわるあらゆるものを様々な切り口から掘り下げるタウン誌。直木賞作家・高橋義夫や文芸評論家・池上冬樹、作曲家・服部公一など、山形にゆかりのある文化人も多数寄稿。2001年創刊。全88号。