●温泉大好き人間
長岡信也 <コピーライター カメラマン>
伊藤博美 <フリーアナウンサー 温泉ソムリエ>
進行役/編集部
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女湯と男湯は、こんなに違う!

編集部 温泉百態、温泉百景みたいなテーマで次に進んでみましょうか。

伊藤 私は温泉地をずっとこう回っていて思うんですけど、年は取っても、いつまでも女は女なんだっていうのを、すごく思う時があります。特に脱衣所での女同士の会話とかで…。

長岡 ああ、そう。

伊藤 すっごく思います。

編集部 男の脱衣所なんて会話なんてないよね。

長岡 しないですね。ほとんど話ししない。

伊藤 取材で行った時とか、女の人はほらちょっと映りたがらないのであれなんですけれども、あらまし終わったあととかで、脱衣所で逆に声かけてくるおばちゃんとかいるわけですよ。
「何、どごのや?」とか、「いづ出んのや?」みたいな話ですよね。そこから話していると、何か「私なんてほれ~」みたいな会話がそこからこう始まるわけですよ。

「あんた、んだげど胸、チチおっきいがらいいでほれ、モデルなったらいいんねが」みたいな、何かそこで違う会話がだんだん繰り広げられてくるんです。
そのやりとりを聞いていたりすると、おばあちゃんであろうと、女としての意識は女のままなんだっていうのをすごく感じるんですよね。

長岡 どこまでも裸になるんだろう。

伊藤 あれね、ちょっとうまく言葉に表現できないんですけど、ものすごく、一般的にその何かエロスとかそういうのを感じる年齢の人ってもうちょっと若い世代の人じゃないですか。でもそういう世代を越しても、何か意識の中では根底やっぱり女は女なんだみたいなものは脱衣所で感じました。

長岡 裸になるというのは大きいのかもね。

伊藤 いつまで経ってもそういう会話が、私たちが話しているような会話だったり、ある意味女子高生が話しているような会話にすら聞こえてきちゃうんですよ。

長岡 ばあちゃんが話すのがね。

伊藤 そのやりとりが、女性同士固まってのやりとりが、だから年齢関係なく、やっぱり女はいつまでも女なんだっていうのを私温泉の取材を通して、いつもすごい身にしみて感じています。

長岡 脱衣所トーク。

編集部 男はどうですか。

長岡 基本的に無言ですよね。

伊藤 えー、そうなんですか。

長岡 基本的に無言。うん、男の脱衣所は静かだよ。ベラベラ話している人はまずいないね。「いい湯でしたね」なんて話しかけてくる人もいませんし。
だから、もしかしたらお風呂に限らずなのかもしれないですけど、男は一人になりに温泉に来て、女は何だろうコミュニケーションをしにお風呂に来るんでないかな。

伊藤 はあ、なるほど。

長岡 だってお風呂で話なんかもうかったるいですもんね。それをもう湯につかって目つぶって、じーっとしているほうが気持ちいいじゃないですか。
それで何か話しかけられると、話しするけど、親子で行ったって友だちと行ったって、話ししないですもん、別に。出てからは話しするけど、風呂に入っているときは、もう一人、唯我独尊。

編集部 男にとっては瞑想するところなんだ。

伊藤 すごい名言。

長岡 ね、目つぶりますよね。女が入っているところ見た時ないけど。女の人が目つぶって風呂入っているのって、あんまり想像できないね。

伊藤 私は一人で行くから、その瞑想っていうのも何か分かるんですけど、でもけっこう見ていると、やっぱり愚痴であったり、相談であったり、何か、「いやー」なんて言って、「誰々さんから何か話聞いてもらったらよ、私ちょっと、ほっとしたわ」みたいな、「何、あなたまだまだこれからだべ」みたいな、そういうやりとりがあるわけですよ。

長岡 風呂の中でね。

伊藤 風呂とか脱衣所の中でね。

長岡 すごいね。

伊藤 「いやー、私何か元気になったわー」って、「何ほだな、あんたなまだこれからだべー」とか、「ほだな、んだげど、私たちもほれ、いつお迎え来てもよー、おかしくないがらよー、やっぱりここはよー」みたいな会話が聞こえてくると、風呂って素晴らしいって、人がこうやって何か自分を開放して元気になってるみたいな、そんな光景ですよね。

長岡 やっぱり男と女の違いなのかも知れない。

伊藤 違いなのかな。特に何人かで一緒に入りに来ている人とかの話題を聞いていて思うんですけどね。

編集部 でも、「裸の付き合い」って男の場合しか言わないから不思議だね。

伊藤 あんまり難しい話はしなくても、何となく安心感っていうのはやっぱりあるかもしれないですよね。

長岡 男が連れだって来ているなと思っていても、その二人がワーワー話しているなんていうシーンはないですよね。

伊藤 そうなんですか。

長岡 だから一人一人別々に並んで入っていても、うーんって腕組んだりして入っていますよね。そこは大きな違いかもね。仕切りが上までない開いている温泉なんかに入っていると、女風呂って賑やかだよね、確かに。

伊藤 温泉は瞑想っていうので私ほんとにそうだと思ったんですが、私温泉に行って浸かっているときとか、あとは自宅のお風呂のときとか、何かふって浮かぶのって、「あっ、あれ」、何か迷っていることとか例えばあったとして、「やっぱりこうしよう」っていうふうに、ふって浮かんだりとかするのって、私温泉のときとかが多いんです。

長岡 でも何か浮かんでくるときはありますよね。あれしなきゃ、これしなきゃとか。

伊藤 インスピレーションみたいなものとかはやっぱりそういうのはあるのかなって。