「群像ミステリ」
'09.09
文芸評論家 池上冬樹
▼海外にあって日本にないものは何か。それは群像劇だろう。映画ではロバート・アルトマンの群像劇(『ゴスフォードパーク』)が新鮮に見えるように、小説ではカー
ル・ハイアセンの群像ミステリ(『ストリップ・ティーズ』)がたまらない魅力を発している。そのハイアセンの新作『迷惑なんだけど?』(文春文庫)がなかなか面白
い。

▼一言でいうなら、孤島で繰り広げられる脱走と追跡のサンバとなるか。主要人物が10数人を数えるのに一人一人強烈なキャラクターなので忘れることはない。というか、物語では彼らの奇矯な性格が増幅されるような展開になる。

▼ハイアセンは前作『復讐はお好き?』で人気をはくし、年末の各ミステリ・ベストテンの上位を独占したけれど、今回もまた上位に入るのではないか。

▼なお、ハイアセンに対抗する作家は阿部和重である。『シンセミア』(朝日文庫)は日本推理作家協会賞をとってもおかしくない群像ミステリの一大傑作だ。
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