八文字屋

閉じる

八文字屋

menu

店舗情報

イベント

桜桃

田中 邦太郎

※一部表現・肩書き等に掲載誌発刊時点のものがある場合があります。


 県産サクランボが早出しの日本記録を更新した。この八日に天童市荒谷の斎藤清邦は、ハウス・ポット栽培によるサクランボを東京市場に出荷、三百グラム入れ化粧箱一個で十万円の高値、一粒が何と千円を超すというのだから驚く。

 果樹王国を誇る山形県の目玉は何といってもサクランボ。明治九(一八七六)年に初代県令三島通庸が北海道開拓支使庁から苗木を取りよせ、山形市千歳園(現・山形東高)に試植したのが、そもそもの始まり。桜桃(おうとう)といった。

 大正四(一九一五)年十月発行の『日本及日本人臨時増刊・郷土光華号』(主筆三宅雪嶺)に、お国自慢の文「桜桃」が載っている。井上轍鮒の筆によるものだが、おおよそ次のようなものである。

 明治二十四(一八九一)年、京都で内国博覧会があった。県吏が桜桃を出品しようとしたが、遠距離で潰れやすい果物だから、その輸送にはたと困り、古くから、〝のし梅・甘露梅〟で有名な山形市の小林栄玉堂に命じた。さて、京都で展示された桜桃は?とみれば、ガラス瓶の中に、一粒一粒が綿に包まれて、整然と入っていた。色も美しく、風味も変わらなかったという。「これは一体何だろう」と陳列場前は大変な人だかりだったという。ある西洋人が目をつけて注文、これが特産品の販路第一号であった。

(平成元年三月十五日記)

 

(出典:『やまがた街角 第77号』2016年6月1日発行)


 

一覧に戻る