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“やまがた、大好き。”

ダニエル・カール
(タレント)

聞き手:編集部

※一部表現、寄稿者の肩書等に掲載誌発刊時点のものがあります。


•当地で『やまがた街角』という雑誌を発行しているんですが、その誌面で、山形にゆかりのある方に、同じ質問を八つほど用意させていただきまして、頂戴したコメントをその都度掲載していきたいというのがこの企画の主旨なんです。全部お答えいただくなくても結構ですので宜しくお願い致します。

ダニエル はい、んだが。いいですよ。

 

•山形の特に好きな風景を教えてください。

ダニエル ん~むずかしいな。どこ見てても好きだから……今日も鈍行乗ってきて、東根とか天童あたりのさくらんぼがあと一週間ぐらいかな?なんていう風景も好きだし。村山盆地の北部の方で田圃が黄色くなっている風景とか、稲穂が風で波のようになるとか、そういう風景もいいね。山寺もいいしね。それから長井あたりから朝日連峰をながめる山の形がぼくの故郷のロサンジェルス近郊の山の形にちょいと似ているので、気持が落ち着きますね。小国町の谷間から飯豊連峰の見える感じもいいね。山形はやっぱり山がポイントだね。山を見れば、いま山形県のどこにいるのかすぐわかるよね。いくら迷子になっても千歳山が見えれば這い這いしてでも家に帰れるからね。

 

•山形の街なかも だいぶ歩かれましたか?

ダニエル そうですね。でも山形にいた頃はお金がなかったので、ただぶらぶらと。で、寺町は気に入ってますよ。諏訪神社もよく訪ねました。薬師公園とか馬見ヶ崎川も行きましたね。

 それから自転車で笹谷峠までのぼったりしました。のぼるのはもちろん大変ですけど、下りもブレーキかけっぱなしだから音がキーキー凄くてね。でもなかなかいい景色が見れましたね。それからバイクで仙台まで行ったことあるんだけど当時笹谷トンネルは原付が通れなくて、急なカーブだらけの山道を走った記憶があります。

 街の中だと新築の建物に囲まれるようにして茅葺き屋根の家があったりすると、いいですよね。古い建物が好きなんで。

 

•行き付けの店はありますか?

ダニエル もうだいぶ山形も様子が変わってしまってますから残ってる店もね。駅前にある「オクテット」というジャズ喫茶にはよく行きました。女房がジャズが好きで。ぼくはジャズはあまり聴かなかったんですけど、女房を口説こうと思って通ったんだよね。それからジャズが好きになりました。

 

•山形の好きな食べ物は?

ダニエル いっぱいあるね。果物王国だし、山菜もあるし、きのこ、芋煮、季節によって変わるからね。これひとつといったらやっぱり蕎麦でしょうかね。あっちこっちの蕎麦屋さんに行ってるんですよ。硬めで歯ごたえのある蕎麦がいいですね。尾花沢に「福原そば」というのがあって、一本のそばが長いんです。食べるときは一本だけとって食べるんです。その時だけたまたまだったかも知れませんがね。宮内の方にある「源三そば」、村山の「あきらそば」、上山の「原口そば」、天童の「水車そば」、小国の「かなめそば」。とにかくいっぱいいろんなとこ行きましたね。

 

•お酒もOKですか?

ダニエル 最近は「十四代」は時々飲んでますし、昔は高畠町の「米鶴」ですね。義理の父の好きな酒なんですよ。それから小国町の「櫻川」とか、天童の「出羽桜」もよく飲んでますし。新庄の酒て辛口の「最上川」。鶴岡では「大山」や「竹の露」、酒田は「初孫」とか、その土地その土地、郷に入っては郷に従えじゃないけどね。櫛引町に黒川能の取材に行った時いただいたなかなか手に入らない「奥羽自慢」という地酒もうまかったな。

 

•ずいぶんあちこち行かれてるんですね。

ダニエル 山形県内四十四市町村のほとんど行ってるんでないかな。

 

•酒の話は際限なく盛り上がりそうなので次に進ませていただきますと、これまで山形で出会った人で印象に残っている人はおられますか?

ダニエル いっばいおりますね。県庁でお世話になった現在南高の校長をしておられる大場登先生とか、すずらん街の「アライ」という床屋さんがありますけれども、そこの店長さんの齋藤さんと、親代わりのお母さん。そこによく自転車を止めさせてもらったんですけね、出張の帰りとかにいつもお茶とか漬物とか出してくれたんです。

 

•大場先生とのエピソードなどありましたら……

ダニエル 大場先生は、教育委員会で仕事をしていた時の上司なんだけど、お盆の時三日間ほど先生の実家に遊びに行ったことありました。大場さんの家は大家族で、そこでのんびりさせてもらって、山形弁の練習なんかしたり、そんな思い出があります。

 

•山形にいらっしゃる前はどちらに?

ダニエル 学生の時は関西で一年半暮らして、その後半年くらい佐渡ヶ島に行きました。大学卒業してから山形に来たわけです。そしてすぐ先生を始めたんです。山形県教育委員会では初めての外国人だったんじゃないかな。仕事はかなり忙しかった。

 

•それは、子どもたちに、いわゆる「ネイティブ・イングリッシュ」というか生の英語に触れさせるため教育現場に派遣されるということなんですね?

ダニエル んだっす。んだっす。その目的で。子どもたちにとっては初めて外国人を見ているわけだから反応が二つに分かれましたね。オレがガッハッハって笑いすると喜んでくれる子どもたちと、緊張してかどうか、シーンと静かになってしまう反応とありました。

 たぷんオレが来る前に、担当の英語の先生がどういうふうに子どもたちに紹介してくれていたかによって、反応の仕方も違ってきていたのかも知れませんね。「おもしろい先生がくるよ」と紹介されるのと「外国から先生が来るからみんなちゃんと勉強しなさい」では、子どもたちの、オレに対する印象はまるで違うわけだから。それと県民性として山形にはシャイなところがあるんで。それをどうやって乗り越えるか試行錯誤して頑張りましたよ。ギャグを言えるようになったのもそんなところからです。山形弁もそのための強力な道具だなと考えたわけです。

 

•子どもたちが安心するわけですね。ところで、カールさんが一番最初に覚えられた山形語はなんでしたか。

ダニエル 「んだ」だったかな。その次に覚えたのは「んめえ」かな。あとは「むずる」もおもしろかった。山形市って城下町だからけっこう道が複雑でしょう、道をきいたら「まず、この道ばまっすぐえって、ぶつかたら右さむずて……」ってね。「むがさり」とかもおもしろいことばだよね。そして、教育委員会っていろんなところから来ている人たちの職場なんで、自分にはわからないことばでも誰かかれか必ず分かる人がいるわけ。不思議な方言でもだから職場に帰るとすぐ解決したんです。

 

•もう一つだけ、最近読んだ本を教えてください。

ダニエル 童門冬二さんが書かれた『上杉鷹山』、これは上下二冊になっているんですが。童門さんの日本語はわかりやすくていいですね。小説風な書き方だし、オレは歴史の本がけっこう好きだから。それからもうひとつ最近読んだ本といえば『置賜地区の民俗学』。これは絶版になっている本ですけど。古い生活様式とか昔の風習にも興味がある「変な外人」 だからね。

 

•オチもつけていただいたところで、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

 

(出典:『やまがた街角 第7号』2002年8月1日発行)


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